眩いまでの光と、深く闇を落とす影。
光のあるところには、常に影が寄り添う。
そして、影が存在するためには、光が絶対不可欠となる。
目の前で自分を告発する少年を、高遠は興味深い眼差しで見つめる。
一見した風貌も、普段の言動も、どこにでもいる普通の高校生である彼。
だが、難解な事件が起きると、その頭脳は真相を求めてフル回転する。
そして、自分の立てた計画をことごとく看破してしまうのだ。
その鮮やかに組み立てられた推理には、針の穴ほどの隙間もない。
もっとも、そんな隙間が僅かでもあれば高遠を追い詰めるなど到底不可能だ。
そう、この自分を追い詰めるほどの、完璧な推理。
それが出来る人間など、彼以外に存在するだろうか。
高遠が魅入られたのは、その頭脳と、もう1つ。
純粋なまでの、彼の正義感。
犯罪を憎む彼の瞳は、真っ直ぐ前を向き、その奥にあるのは曇りなき光。
自分と余りに対照的なその光に、高遠は惹き付けられるのだ。
彼と高遠は、まるで1枚のカードの表と裏だ。
タロットカードが、同じカードの正位置と逆位置とで意味が正反対になるように。
彼と高遠もまた、同じ性質のカードでありながらその価値観のベクトルだけが全く逆に向かっている。
それを話せば、きっと彼は激しい怒りでもって否定するだろうけれど。
彼は、高遠の事を『認めない』と言った。
もちろん、高遠も認めてもらいたいと思った事などない。
そもそも、自分と彼が互いに理解し合うなどという事は不可能だ。
だが、それでいい。
理解してしまえば、そこで『終わり』だ。
きっと彼にとって高遠も、彼が捕まえた他の犯罪者達と同じ場所に落とされてしまうのだろう。
他の犯罪者達と同じ場所など、この自分に相応しい場所であるはずがない。
彼にとっての自分は、常に特別な位置にいなければならない。
永遠に追い続ける存在として。
どれほど追いかけても決して捕らえる事の叶わない、自らの影のように。
「いずれまた、どこかでお会いしましょう」
何度か繰り返した言葉。
そして、これからも繰り返すであろう言葉。
それは、終わる事のないループ。
抜け出す事など許さない。
─── 君は、一生をかけて私を追い続けるのだから。
初書き「金田一」。…………金田一出てないけど。名前すら。
ひたすら『彼』ばっかりで、読み直して「名前出てねえ!」と(笑)
何だか、相当ワケの分からない代物になっておりますね……。
とりあえず、高遠さんのちょっぴり歪んだ愛を感じ取って頂ければと。(←愛……なのか?)
だって、高遠さん、どう考えても金田一に執着しすぎだし。