「悟浄。正直に答えて下さい」
「は? 何の事だよ」
突然の八戒のセリフに、悟浄は訳が分からずに眉を寄せる。
そんな悟浄の前に、1冊の本が開かれた。
「……何だこれ、「いきなり次回予告」?」
「そうです。で、ここを見て下さい」
そう言って八戒が指差した先は、その中の投稿ネタの1つらしい。
『「大好きっ!」
屈託無い笑顔で何度も繰り返す悟空に、三蔵は胸が疼くのを感じていた。
このままではダメだと知っているのに……。
だがそんな二人に八戒の魔の手が!
悟空を三蔵は守る事ができるのか!?
次回、『ポンチョとヒゲのアミーゴ』
刮目して見よ!
by 紅い人。』
「……で?」
僅かな沈黙の後に悟浄が呟くと、八戒が1つため息をつく。
「『で?』じゃなくて、これ、悟浄でしょ?」
「は? 何で俺なんだよ!?」
いきなり決めつけられて、悟浄は思わず強めに反論する。
すると、傍でそれを見ていた三蔵と悟空が話に加わってきた。
「とぼけんな、明らかにてめえだろうが」
「『紅い人』だもんな」
「違うっつってんだろ!? 俺じゃねえって!」
「てめえじゃなかったら誰だってんだ」
「俺が知るかよ……」
まともに反論する気力も既になく、悟浄は脱力して項垂れる。
「紅い……・あ! もしかしてさぁ……・」
悟空が何かを思いついたらしく手を打つと、同じ事を考えたのか八戒がセリフの先を引き取った。
「紅孩児……だったりしたら面白いんですけどね」
それを聞いて悟浄がなるほど、と思ったその時。
「何が面白いんだ?」
突然聞こえた声に、悟浄を含めて4人はバッと振り向いた。
「あ! 紅孩児!」
「相変わらず唐突に出てくるヤツだよな、お前……」
「やっほー! オイラもいるよー」
その場に不釣合いなほど明るく元気な声が響いた途端、三蔵のこめかみに青筋が浮かんだ。
「おい紅孩児! 余計なモンを連れて来んな!」
そういう問題じゃないと悟浄は思ったが、今迂闊にツッコむと危険である。
当の李厘はというと、三蔵の不機嫌オーラなどどこ吹く風だ。
「いいじゃんか、別にー! 城で留守番してたってつまんないもん!」
「うるせえ、さっさと帰れ」
余りにもうんざりとした三蔵の様子を見ると、結果が分かっていてもからかわずにいられないのは悟浄の悲しい習性だろうか。
「もう、三蔵様ったら照れちゃってv」
口にした途端、チャキ、と音を立てて銃が構えられる。
「……そんなに死期を早めたいか」
即座に発砲されなかった事に安堵しつつ、悟浄は大袈裟に手を上げる。
「ギブギブ。しっかし、紅孩児。お前ら、そんなに暇なわけ?」
「別に暇なわけじゃない。李厘がどうしてもというから付いて来てやっただけだ」
いつもの真面目一辺倒の口調でそう言った紅孩児に、悟空が眩しい笑顔で無邪気に針を刺した。
「あ、知ってる。そういうの、シスコンって言うんだよな!」
さくり。
「ご、悟空……。なんか紅孩児のヤツ、すっげえダメージ受けてんぞ?」
地面に突っ伏した紅孩児に少し同情の視線を向けながら、悟浄は一応ツッコんでみた。
悟空はというと、何故紅孩児がダメージを食らっているのかが分からないらしく困り顔だ。
「え、だって前に三蔵が……」
その悟空のセリフにガバッと身を起こした紅孩児は、三蔵に向き直った。
「げ、玄奘三蔵! 貴様は一体何を教えている!」
あからさまに動揺している紅孩児とは対照的に落ち着き払った三蔵は、しれっと言い返した。
「事実をありのままに教えているだけだが。何か違うか?」
自信満々にそう言い切った三蔵に、紅孩児は再び崩れ落ちた。
「……もういい。李厘、帰るぞ……」
力なく立ち上がった紅孩児の言葉に、李厘がゴネる。
「え〜! オイラ、もっと三蔵と遊びたい〜」
「誰が遊ぶか! いいから帰れ!」
「まあいいや。また遊びに来るからね〜」
飛竜に乗って帰っていく紅孩児と李厘を見送って、ようやく落ち着きが戻る。
「……ふう。台風一過って感じですねぇ」
「……でも多分、もう当分は来ねえだろ」
というよりも、おそらく来る気力はないだろう。
邪気のないヤツが1番恐ろしい。
そう思った悟浄だった。
日記アテレコネタのサルベージ第5弾。
「いきなり!次回予告」ネタから生まれた変なブツ。
何かもう、紅孩児ごめんなさい、としか。
つーか、本当に何を教えてんだか分かったもんじゃないですね、三蔵(笑)