とある街の宿の一室。
椅子に腰掛けて、三蔵は眼鏡をかけるとバサリと新聞を広げた。
しばらくは新聞に没頭していたが、じっと見つめる視線に気が付いて新聞を持つ手を下げる。
「何ジロジロ見てやがる、バカ猿」
「んー。三蔵ってそんなに目ぇ悪いの?」
悟空の視線は、三蔵の眼鏡に向けられていた。
「悪くなきゃ、眼鏡なんてかけねえよ」
「でも、普段は全然かけてないじゃん」
「実は『老眼鏡』だったりしてなー」
悟空の疑問に三蔵が答える前に、悟浄がチャチャを入れる。
「……貴様、今何て言いやがった……?」
ゆらりとオーラを漂わせながら、三蔵は銃を取り出す。
「い、いやだって、新聞読む時だけかけてるって変だろ!?」
「それだけ強度の近視というだけの事だ。普段は邪魔だからかけてないがな」
「ンだよ、それだけか? ……ち、つまんねえの」
「何か言ったか?」
「何でもアリマセン」
カチリ、と銃の安全装置が外れるのを見て、悟浄は慌てて両手を上げる。
「……でも俺、1つ疑問があるんだけどさぁ……」
まだ納得しきれていないのか、悟空が首を傾げている。
「何だ」
「そんなに目ぇ悪いのに、何で眼鏡かけてない状態で戦ってて敵に弾が命中すんの?」
悟空の意外なほど鋭いツッコミに、三蔵は驚きの余り咄嗟に答えが返せなかった。
「そういえば不思議ですよね。今まで気にしてませんでしたけど……」
今まで微笑みつつやり取りを見守っていた八戒が、顎に手をやって考え込んでいる。
「で? その辺はどうなってるんですか、三蔵?」
余程興味をそそられたのか、ずずいっと迫ってくる八戒に、三蔵は少し後退る。
「……そんな事、どうでもいいだろう」
「どうでも良くありません。戦い、つまりは命に関わる事なんですよ?」
真剣な顔で正論を言われて、三蔵は言葉に詰まる。
「そうだぜ、三蔵。それとも言えねえワケでもあんの?」
逆にあからさまに楽しそうに話に乗る悟浄には、鉛玉を2、3発お見舞いしておく。
「とにかく、命中率に関してはごちゃごちゃ言われる覚えはねえ。
ちゃんと1匹につき1発で仕留めてるんだからな」
「それはそうなんですが……まあ、そんなに言いたくないなら仕方ないですね」
案外あっさり引き下がった八戒に三蔵は不審そうな目を向けながらも、折角話が終わりそうなのでそのまま黙っていた。
「じゃあ、僕達は部屋に戻りますね」
八戒はそう言うと、悟浄と共に部屋を出て行ってしまった。
「なあ、三蔵。やっぱ俺にも言いたくないの?」
悟空が覗き込むように尋ねてくるのを見て、三蔵はため息をついた。
「そんなに知りてえのか?」
「知りたい!」
即答した悟空に苦笑しつつ、三蔵は新聞をテーブルの上に置くと眼鏡を外す。
「……アイツらには余計な事喋るんじゃねえぞ」
「うん!」
嬉しそうに答える悟空に、三蔵は眼鏡のワケを話し始めた。
だが、三蔵は気付いていなかった。
八戒によって超極小ビデオカメラを装備させられたジープが、ベッドに寝そべっていた事に。
日記アテレコネタのサルベージ第6弾。
特に大したオチもなくてすみません。
三蔵ファン且つ眼鏡キャラ好きの私にとっては、三蔵の眼鏡姿というのはとても萌えなのですが。
実際のところ、三蔵の眼鏡の真実は一体どこにあるのでしょうか。