こたつむりん同盟加盟秘話





「なあさんぞー」

「さんぞーってば」

「さんぞーさんぞーさんぞー!!!」

「喧しい!」

スパーン

小さな宿屋のお世辞にも広いとはいえない一室で
子気味よいハリセンの音がフェードアウトしていく。

「いってええええええ!」

そのハリセンを頭のてっぺんに直撃された小猿のような少年は、
打たれたところを両の手で抑えうずくまりながら恨めしげに
打ってきた本人を見上げている。

「いいじゃんかあ、せっかくもらったんだから、いっぺんくらい着てみたって!」

「却下」

大きなハリセンを器用に袂の中にしまいこみながら、
三蔵はくるりと悟空に背を向ける。

「大体なんで俺がそんなもん着なきゃならんのだ」

「いいじゃないですか、せっかく送っていただいたんですから、ほら、ロゴ入りなんですよ?これ」

傍から見ていた八戒が、手にもったそれの胸のあたりに施された刺繍を指し示しながら
ニコニコと参戦する。

「・・・ちょっと元々の模様に混じっちゃってはいますけどねv」

確かに。
八戒の示したソコは、元の布地の模様が少し空いた所とはいえ、遠めに見ればロゴかどうかは
はっきりいってわからない。
今悟空と三蔵が問題にしていることはそこではないのだが、八戒にとっては気になる
事象であるらしく、近づけたり遠ざけたりしながらソレを眺めている。
八戒の参入によって三蔵は仕方なく振り返りはしたものの、嫌そうな目でソレを見やった。
ちなみに八戒はもうソレを着込み、すっかり和んでしまっている。

「いいじゃんかあ、なあ、いっぺんだけでもいいからさ」

床にぺたんと座り込んだまま、上目づかいでなおも食い下がる悟空に、三蔵はふうとため息をついた。

「何だってそんなにしつけーんだ」

「・・・だって・・・おれも・・・三蔵のとお揃いのソレもらったから・・」

「・・・・・お前はきてねーじゃねーか」

「・・・一緒に・・・着れたらうれしいかなって・・・思って・・・・」

もごもごとしゃべりながらも、いつのまにか悟空の目はうっすらと水の膜がかかっている。
三蔵は少しあせった様子で(といっても他人にはわからない程度ではあるのだが)八戒に目をやった。
相変わらず笑ってこちらを見ている。表面だけで。
目が笑っていない。
三蔵は渋い顔をしてもう一度悟空に目をやった。
悟空の大きな目からは今にも涙がこぼれてくるんじゃないかと思わせて―――


―――折れることにした。
いや、悟空におねだりされた時点でこうなることは時間の問題でしかなかったのだろう。




数時間後。
4人仲良く半てんを着てコタツで和んでいる三蔵一行の姿があったとかなかったとか。
そしてその半てんにはちょっと見に、見にくいかもしれない
「こたつむりん同盟」のロゴがあったとかなかったとか。





おわり。








しぇいふ様より頂きました〜!
日記と掲示板で話題になっている『こたつむりん同盟』。
悟浄さんは既に日記で加盟済み(笑)なのですが、八戒さんと悟空、それに三蔵様を加盟させて下さいましたv
ふふふ、これで三蔵一行全員を引き擦り込めました。
はんてん(しかもロゴ入り)着てこたつで和む4人……想像すると可愛すぎますv
そしてこれを拝見して暴走した管理人のアホなおまけが↓に……。









 加盟秘話・おまけ。

「う〜、あったかい〜♪」
悟空はコタツに全身潜り込み、まさに『こたつむりん』状態である。
「おいバカ猿! せめて上半身くらいコタツから出せ! というよりも、寝転がってねえで座れ!」
「だって、寒いんだもん」
「冬なんだから当たり前だ」
全身の温もりに未練はあるものの、三蔵が袂に手をやったのを見て仕方なく起き上がる。

起き上がって前を向くと、テーブルの上に置いてあるものが目に入った。
「あ、みかん! なぁなぁ、食っていい!?」
そう言いながら、もうその手はみかんを手に取っている。
「勝手に食え」
「へへ、やった〜」
悟空はウキウキしながらみかんを剥いて食べ始める。

「あ、コラ猿! 1人で食うなっつーの!」
次々となくなっていくみかんを見て、悟浄が悟空の頭をぐりぐり押さえつける。
抗議する悟空をかわしつつ、悟浄もみかんを手に取って剥き始める。
それどころか、八戒までが美味しそうにみかんを食べている。
何も知らない第三者が見れば、実に微笑ましい、ほのぼのとした光景である。

「あれ? 三蔵、食べないの?」
さっきから3人を呆れたように見ている三蔵に、悟空が声をかける。
「いらん」
「だって、甘くてすっげえ美味しいよ?」
「そうですよ、三蔵。これ、愛媛の伊予みかんなんですよ?」
「……何処だ、それは」
「細かい事は気にしちゃいけません。それよりも、折角なんですから三蔵も食べましょう?」
「いらねえって言ってんだろ」
「もしかして、『手が汚れるから』とか言うんじゃねえの? 潔癖症だからねえ、三蔵サマはv」
「……殺すぞ」
「なぁんだ、なら、これでいいじゃん。はい三蔵、あ〜ん♪」

「「「……………………………………」」」

悟空を除く3人が、座ったままピキリと固まってしまっている。
無理もない。剥いたみかんの一房を三蔵の前に差し出して「あ〜んv」などという衝撃発言。
『v』は作者の三空妄想ウイルスが勝手に添付したものと思われるが、気にしてはいけない。
それはともかく、さすがにこの発言には、3人とも一瞬思考がついていかなかったようだ。

ここでいち早くアッチの思考から戻ってきたのは、やはり八戒であった。
「……悟空? あの、『あ〜ん』というのは……?」
「え? だって、手が汚れるから嫌なんだろ? これなら手ぇ汚れないじゃんか」
確かにその通りである。その通りではあるのだが。
「ふざけんな。そんな真似出来るか!」
案の定、三蔵はその手を突っぱねる。

しかし、次の瞬間目にした悟空の心底悲しそうな表情に、罪悪感が襲った。
「……俺、三蔵に食べて欲しくて……」
本日2回目の、うるうる瞳攻撃。

────そして本日2回目の敗北。



とある宿の一室、そこの部屋の中央のコタツには、嬉々として三蔵にみかんを食べさせる悟空と、
恐ろしく不穏な雰囲気を纏わりつかせた八戒と悟浄の姿があったという……。




えんど。





……しぇいふ様、折角頂いた素敵な作品にこんなアホなオマケつけてしまい、
申し訳ありません…………(汗)(←じゃあやるなよ)
お話を拝見していたら、頭の中にゴォォォッと妄想が渦巻いてきました。
その妄想の赴くままに、妙な代物を書き上げてしまった次第であります……。
悟空の「あ〜んv」が書きたかったんですー!(←壊れてるよ……)
しぇいふ様の作品の質を落とすかのようなブツをくっつけてしましましたが、どうぞお許しを……(涙)





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