柔らかく降り注ぐ、眩い太陽の光。
その下で屈託なく笑う彼の人。
そんな未来を差し上げたかった。
もしも叶うならば、それをすぐ傍で見守っていられたらいいと思った。
その願いは、一度は完全に潰えたはずだった。
鉄柵にこの身体を貫かれた、あのときに。
もうこの方を守っていくことは出来ない。そう覚悟した。
零れ落ちる涙を止める術もない自分が、あまりにも情けなかった。
太陽の光どころか、暗い雨を降り注がせているのは、他でもない自分自身だった。
こんな顔をさせたいわけではないのに。
光のような笑顔を見たかったはずなのに。
暗く落ちていく意識の中で、ひたすら願った。
いつか、この方の上に優しい光が降り注ぎますように、と。
そして今、生きながらえ彼の人のいる場所への道を辿っている。
追っ手の目から隠れるための籠の中、息を潜める。
外は、雨が降っているようだ。
今も……あの方の上には冷たい雨が降り続けているのだろうか。
寒さに耐えながら、懸命に歩き続けているのだろうか。
優しい……あまりにも優しい王子殿下。
その心に深い傷を負わせたのは、自分だ。
もしも許されるのなら。
その雨から守る役目を、もう一度。
いつか晴れ間が見えるまで、この身を傘にして守りたい。
雨に濡れても立ち上がる強さがあることは、知っているけれど。
少しでも濡れずに済むように、その雫を拭って差し上げられるように。
そうすればいつか、夢に見たあの穏やかな光があの方を照らしてくれるだろうか。
柔らかい日差しの下、サンドイッチを食べ、本を読み、いつしかうたた寝をする。
そんな、本当ならば何でもないはずのひととき。
笑みが零れる、優しい時間。
「殿下……」
小さく、呼びかける。
応えてくれる声はなくとも、口にするだけで胸の中が暖かく、そして締め付けられるように痛くなる。
早く会いたかった。
随分と長く聞いていない、その声で名を呼んでほしい。
それだけで、どんなに満たされるだろう。
会えないことで、愛しさは増していくばかりだった。
この方の傍らでなくては生きていけないとさえ思った。
それは、太陽の光そのもの。
太陽がなくては、人は生きてはいけない。
しとしとと、雨は降り続く。
あの方の元へ辿り着いたなら、きっとこの雨は止むだろう。
そのとき、同じようにあの方にも光が降り注いでくれればいい。
冷たい雨の後には、いつか必ず暖かい陽射しが訪れる。
そう信じて、ゆっくりと目を閉じた。