上映会。




皆様、こんばんは。
本日は、僕、猪八戒の主催するビデオ上映会にご参加下さって本当にありがとうございます。
今からご覧になって頂くビデオは、旅の途中に僕が趣味で撮影したものです。
こっそり隠し撮りしたものがほとんどですので、三蔵達にはくれぐれも内緒にしておいて下さいね?

それでは、早速上映を始めましょうかv
なお、ビデオ内容の解説は僭越ながら僕が担当させて頂きます。
今回はビデオNo.18の上映を行います。ごゆっくりと、お楽しみ下さい。





「おや、三蔵、何処に行くんですか?」
「煙草買ってくんだよ」

ああ、丁度これは三蔵が宿から出るのを入り口近くで見つけた時ですね。
たしかこの後、悟空が……。

「三蔵! 出掛けんの? 俺も行く!!
「食い物は買わんぞ」
「えー、いいじゃんかぁ、ちょっとくらいー」
「うるせえ!」

スパアン!

あはは、相変わらずキレイな音がしますねえ、三蔵のハリセンv
さて、この2人で買い物という事で、ジープについていってもらったんですよね。
ほら、三蔵が何か妙な気起こしちゃマズイでしょ?
あ、そんな事言ってる間に街に出てしまってますね。

「あ、ジープもついてきたのかよ」
「キュキュ〜」
「ったく……」

そう言いながら、悟空が一緒で何となく楽しそうに見えるのは僕だけなんでしょうかねえ。
三蔵の場合、表情に出るプラスの感情は極僅かですから読み取るのが大変です。

「なあ、三蔵! 見て見て、すっげえ美味そうなたこ焼き!」
「却下だ」
「……三蔵のケチー!」
「……代わりにハリセン食わして欲しいのか?」

ははは、本当にこの2人のやり取りは変わりませんね。
でも、何だかんだ言っても、結局買ってあげたりするんですよねえ……。
あ、ほら、やっぱり(笑)。ふふ、悟空のあの嬉しそうな顔といったら。
買ってあげたくなる気持ち、とっってもよく判りますよ、三蔵。

……ん? 何でしょう、あの女の子。
三蔵と悟空の方をジーッと見つめてます。
歳は……5、6歳くらいでしょうか。可愛らしい女の子です。
あ、三蔵達の方に駆けてきましたね。何なんでしょう?
どうやら三蔵達も気付いたようです。

「……何だ」


「おとーさん!!



ピキッ! ピシィィイイイッッ!!


……今、空気が凍りつき、更には亀裂が走る音が聞こえたのは僕だけでしょうか。
「お父さん」って……言いませんでしたか、あの女の子?
しかも三蔵に思いっきりしがみついてます。
三蔵が……『お父さん』って事でしょうか……?


「………………何だと?」
「おとーさん! 帰ってきたんだ! 蓮萌、ずっとずっと良い子にして待ってたんだよ!」
「ちょっと待て。 俺はお前の父親なんかじゃ……」
「おとーさぁん……」

おやおや、泣き出してしまいました。
さあ、三蔵、どうするんでしょうか。
案外、子供が泣いてるのには弱いんですよね、三蔵って。
やっぱり、昔の悟空を思い出しちゃうからなんでしょうか。
まあ、悟空はこんなには幼くなかったでしょうが。

「…………三蔵、子供いたの…………?」
「なっ……! そんなワケねえだろうが! 何バカな事言ってやがる!」
「だってその子、三蔵の事『お父さん』って言ってるじゃん!」
「人違いだ!!
「人違いなら、何で似てるんだよ!? その子、顔立ちとか三蔵に何となく似てるじゃんか!」
「そんな事、俺が知るか!」

悟空がショック受けちゃってますね……。まあ、無理もないですが。
三蔵も珍しく懸命に弁解してます。悟空、何だかコワイ目してますからねぇ。
いやあ、修羅場ですね。こっちの方がドキドキしてきちゃいますよ。
しかし、ハタから見ると痴話喧嘩以外の何物にも見えないんですが、あの2人にその自覚はあるんでしょうか。
それはさておき、三蔵、「人違い」なんてそんな大声で言っちゃったら……。

「ちがうもん! おとーさんだもん! ……おとーさん、蓮萌のことキライになっちゃったのぉ……?」
「だからそうじゃなくてだなっ……!」

女の子が完全に泣いてしまって、三蔵がかなり困っています。
普段見られない姿なだけに、なかなか面白い……じゃなくて興味深いですねv
しかし……本当にどうなっちゃってるんでしょう?
まさかホントに三蔵の子供…………いや、まさかそんな、悟浄じゃあるまいし。
あの子を5歳と仮定して、妊娠がおよそ6年前……三蔵はその時……17歳ですか。
……まあ、年齢的には有り得ない事はないんですが……ちょっと無理があるでしょうか。
三蔵が悟空を見つけたのが確か8年前とか、そんな事を悟空に聞いた事がありましたっけ。
年齢がどうのという以前に、悟空と出逢った後で三蔵が女性とどうこうというのは有り得ませんよね。

あ、悟空がジト目で三蔵を見ています。
その目が「三蔵……本当の所はどうなんだよ?」と語っているかのようです。
かーなーり、視線が疑わしげです。何処となく三蔵に似ているのが、疑惑の原因でしょうか。
当然三蔵もその視線に気付いているでしょうが、今は何言っても無駄だと悟っているようですね。
この事態をどう切り抜けるんでしょうかねえ。

「おい」
「……っく、ぐす……」(←泣き続けている)
「おい…………蓮萌」
!!

おや、女の子が泣き止んで、嬉しそうに笑いました。
名前を呼んでもらえた事が、余程嬉しかったようです。

「なあに、おとーさん!」
「…………家に帰らねえのか」
「帰る! 一緒に帰ろ、おとーさん!」

なるほど。そういう事ですか。
家に帰れば当然母親がいるはずですし、その母親から説得させようという事ですね。
確かに、それが一番確実な手段かもしれませんね。
ただ、こういう展開になった場合……。

「三蔵……やっぱりその子の父親なんだ……」

あ、やっぱり悟空が誤解しちゃってます。
悟空もいつもなら誤解だと分かるんでしょうけど、三蔵の事になると違った方向にいっちゃうんですよねぇ……。

「……(こそこそと小さな声で)違うっつってんだろ。とにかく、お前も来い」
「……うん」
「おとーさん、その人だあれ?」
「家に帰ってから話してやる」
「うん! じゃあ、帰ろ!」

で、その子の家に向かう訳ですね。
あはは。手なんか繋いじゃってまるっきり仲良し親子ですv
これで三蔵さえ仏頂面をしてなかったら、実に微笑ましい光景なんですけどねえ。
悟空が1メートルほど後ろから思いっきり睨んでますが……。(苦笑)
三蔵って、普段全く色恋沙汰に無縁なだけに、悟空も『嫉妬』なんていう経験が少ないんでしょうね。
三蔵、放っとくと後が怖いですよ、これ。
あ、あの家がそうなんでしょうか。何だ、割とすぐ近くなんですね。

「あら、お帰り、蓮萌」
「ただいま、おかーさん! おとーさんが帰ってきたよ!!
「え……? ……!!

蓮萌の後ろから家に入った三蔵を見て、お母さんが固まってしまってます。
信じられない、といった表情です。

「……何だ」
「……あなた……? ……あ! いえ、すみません……!」
「どうしたの、おかーさん? おとーさんが帰ってきたんだよ?」
「……蓮萌、お母さん、お父さんと話があるからちょっと外で遊んできなさい」
「え〜、おとーさんと遊びたい〜!」
「……おい悟空。しばらく遊んでやれ」
「え!? 俺が!?
「いいから行け」
「うん、分かった……」

おやおや、いいんですか、三蔵? 誤解したまま外に出して。
まあ、この場合は仕方ないといえば仕方ないんですが……。
さて、ジープをつけるのは当然……三蔵の方でしょうね。

「……ジープ。お前も悟空と一緒に行って来い」
「キュ、キュキュ〜?」
「お前が一緒の方が、あの子供も喜ぶだろう」

あ! ジープまで追い出されてしまいました……。
折角面白……もとい、良いシーンが録れると思いましたのに……。
仕方ないですね。じゃあ、悟空達の方を見てみましょう。

「おにーちゃん、お名前なんていうの?」
「俺? 悟空だけど」
「じゃあ、悟空おにーちゃんだね! 遊ぼ!」
「……そーだな! じゃあもっと広いトコ行こうぜ!」
「うん!」

……ちゃんと遊んであげているようです。やっぱり悟空は優しい子ですねえv
普段僕達年上と一緒にいるせいか、年下の面倒を見るのが楽しいようです。
やはりアレですか。お兄ちゃんになった気分とでもいうんでしょうか。
それでも少々浮かない表情なのは、三蔵の事が気になっているんでしょうね。
全く、本当に悟空の世界は三蔵を中心に回ってるんですね……。

さて、この先なんですが……思ったより話が長引いたらしくて、悟空達が遊んでる最中で
テープが切れちゃったんですね、あはははは。
というわけですので、このNo.18はここで終わりなんですよ、すみません。
また機会があれば、別のテープも上映したいと思ってますので、また来て下さいねv
じゃあ、僕はこの辺で。
お付き合い、ありがとうございました。






終わり。





三蔵様サイド・シリアスバージョン




後書き。

4343HITのSilice様に捧げます!
リク内容は『八戒さん秘蔵ビデオコレクションの一つ』でした。
……が、すみません、Silice様! こんな妙な話で……。
コレクションのチョイスを私に任せた事、後悔してらっしゃいませんか……?
本当はジープは三蔵の方につける予定だったんですが、それやると絶対ページ増えて
しかもシリアスストーリーになると思いましたので、あえてやめました。
その代わりといっては何ですが、キリリク小説初のオマケ付ですv
その三蔵様サイドのシリアスです。こちらは普通の小説形式でお送りしております。
……何分、ビデオには撮影されてないシーンですので(笑)
ちなみに壁紙は『ビデオ上映』という事でちょっとデジタルな感じを出そうとして玉砕しました(涙)
Silice様、駄文ですがオマケ共々もらってやって下さいませ。



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