「……おい、悟空。起きろ」
悟空の頭を肩から下ろし、腕に抱きかかえるようにして悟空を起こす。
「……う〜ん、さんぞ……?」
明らかに寝惚けた目で三蔵を見上げる。
その瞳が、寝起きのせいか妙に潤んで見えて、三蔵の心臓が跳ね上がる。
油断していたせいもあって、かなり直撃をくらった感じである。
その瞳を見た瞬間、三蔵の頭の中で何かが切れる音がした。
「……? どうしたの、三蔵……?」
まだ寝惚けたままの悟空が、自分を見つめる三蔵を首を傾げつつ見ている。
その仕草が、更に三蔵を煽り立てた。
悟空の頭を抱きかかえたままの腕を持ち上げ、悟空の唇を塞ぐ。
「……んっ……!」
ホワイトデーの時とは違う、深い口付け。
戸惑っている悟空の口内に侵入し、その甘い感触を味わう。
長い長いキスの後、ようやく唇が離れた時には、悟空の瞳はさっきよりも更に潤んでしまっていた。
「……さんぞ……、何……?」
この手の知識は全くといっていいほどない悟空は、ただ戸惑うばかりだ。
「……俺を煽ったお前が悪い」
三蔵はそのまま悟空を地面に横たえ、その上に覆い被さる。
再び唇を重ねようとした、その瞬間。
「キュ〜?」
三蔵の動きがピタリと止まる。
イヤな予感がして横を振り向くと、案の定ジープがぱたぱたと三蔵達の周りを飛んでいた。
元の場所で待機しているか、もしくは八戒についているかどちらかであるはずのジープが、何故、よりによってこのタイミングで三蔵達の元へ現れるのか。
「…………てめえ、八戒の差し金で来やがったのか」
「キュ、キュキュ〜」
「……ほう、なら何故こんな所にいる」
「キュ〜キュ〜キュキュキュ」
「……ふん、それも八戒の入れ知恵か?」
「キュキュ、キュ〜キュ〜」
ちなみに悟空はというと。
先程のキスでしばらく頭がボウッとしていたものの、今は何とか通常に戻っている。
だがしかし。悟空はひたすら呆気に取られていた。
……何故かジープと会話を繰り広げている三蔵に。
悟空にはどうやっても「キュ〜キュ〜」としか聞こえない。
どうして会話が通じているのかさっぱり分からない。
しばらくそうして見ていると、ジープが慌てたようにぱたぱたと飛んでいってしまった。
一体どういう会話が為されていたのか、悟空には知る由もないが。
「……ちっ、八戒のヤツ……!」
三蔵はため息と共に苛立ちを吐き出す。
おそらくこうなる事を見越して、ジープを妨害に送り込んだのだろう。
「な、なあ、三蔵。結局何だったんだ……?」
悟空が、訳が分からないといった風に尋ねる。
「……何でもねえよ。戻るぞ、悟空」
三蔵はそのまま立ち上がり、悟空を促す。
さすがにあんな邪魔が入った後で続ける気力はない。
「覚えてやがれ……」
「え? 何?」
「うるせえ! さっさと行くぞ!」
事情を全く理解できていない悟空の腕を引っ張り、三蔵は休憩場所を後にした。
いかがでしたでしょうか。「三蔵様理性敗北バージョン・八戒根回し編」(←長い)
書いてから、あまりのくだらなさに思わず隠してしまいました。
いや、ふと思い付いたもので書いてみたんですが……三蔵様が……妙です。
何故ジープの言葉が分かるんだ、三蔵様。その辺だけなんかギャグちっくです(笑)
折角発見して頂きましたのに、こんなくだらないモノですみません……。