悟浄&八戒ばーじょんv
悟空が三蔵の部屋に行くために食堂を駆け出していった後。
「かわいいモンじゃねーか、三蔵の言動にいちいち一喜一憂するなんざ」
「全くです。誰かさんとは大違いですねぇv」
「……なぁ、八戒」
「何ですか、悟浄?」
「いや……ナンカさ、機嫌悪くねえ?」
「え? どうしてですか?」
いつもの笑顔がそこにある。
「どうしてって……」
目が笑ってねえんだよ、とは怖くて言えない。
悟空が好きなら、励まして三蔵の所になど行かせたりしなきゃいいのにとも思ったが、そんな事を言おうものなら、明日を無事に迎えられる保証はない。
第一それを言うなら、悟浄だって似たようなものだ。……対象は違うが。
相手が相手なだけに、悟浄の方が遥かに報われていない。
思わず、はぁ……とため息をつくと、呆れたような八戒の声が降ってくる。
「悟浄だって、三蔵に余り近づいて欲しくないって思ってるんでしょう」
ガタンッという音と共に、椅子が倒れる。
「な……!? おまえ、知って……!?」
「おや、気付かれてないと思ってたんですか?」
悟浄の背中に冷たい汗の滝が出来る。
「そんなに……分かりやすかった……とか……?」
「別にそれ程でもなかったですけどね。三蔵本人と悟空は気付いてないと思いますよ」
「そ、そうか……」
少しホッとする。今はまだ気付かれたくない。
悟浄のその態度に、八戒の瞳が妖しく光ったのを悟浄は気付かない。
「悟浄v」
「は……? な、何?」
語尾についたはあとまあくvに、悟浄は限りなく(しかも的中率が抜群に高い)嫌な予感を覚える。
「僕、悟浄にちょーっとお願いがあるんですけど、聞いてくれますよね?」
一応、疑問形の形をとってはいるが、悟浄には命令形にしか聞こえない。
「お、お願いって……?」
「そんな警戒しないでも大丈夫ですよ。たいしたコトじゃないですから」
そう言って、悟浄に耳打ちする。
もう他の客も食事を済ませ引き上げているため、耳打ちする必要はどこにもないのだが、そこは、何となく気分を出すためである。
八戒の言葉を聞くにつれ、悟浄の顔が青ざめる。
「そ、そんなコト出来る訳ねーだろ!」
「大丈夫ですよ、悟浄ならv」
「大丈夫じゃねーって……!」
「……嫌なんですか……?」
「うっ……!」
はっきり言えば、嫌だ。……が、それを言える相手ではない。
「じゃあ悟浄、お願いしますねv」
「お、おい、八戒! やるなんて一言も……!」
悟浄の声は聞こえた筈だが、キレイに黙殺し、八戒は食堂を出ていった。
「どうしろってんだよ……」
食堂には情けない顔をした悟浄だけが残されていた。
終わり。
蛇足の蛇足。
可哀相な悟浄……。って自分で書いといてなんですが。
悟浄ファンの方、ホントにすみません(汗)
ホントに悟浄のこと好きなんです。信じてください……。
八戒が悟浄にした『お願い』については、ご想像にお任せします(無責任)。
まともなコトでないことだけは確かでしょうが。
おまけ的なものですので、短いのはご容赦ください。