丁度太陽が真上近くに位置する頃、三蔵一行は街に入った。
悟空の希望で先に昼食を取った後、一行は宿探しを始めた。
まだ日が高い時間という事もあり、宿はあっさりと見つかった。
さて、問題はこれからである。
一応まだ宿の外に出て行かないように、三蔵と悟浄には言ってある。
だが、いくら八戒でもいつまででも宿に閉じ込めてはおけない。
三蔵も悟浄も、何かと理由をつけて街に出ようとするに違いない。
悟浄は当然だが、普段は余り出歩かない三蔵もそれは同じだろう。
外に出なければ、煙草を調達する事すら出来ない。
そして当たり前だが、2人は別行動を取るだろう。
その場合、八戒の他に見張り役が1人必要になる。
去年は悟空にやってもらったが、今年は……。
八戒はひとまず荷物を置くと、隣の部屋に向かった。
「……と、いうわけで、片方をに見張ってて欲しいんですよ」
「それは構わないんですけど……私の言う事、聞いてくれるでしょうか」
「大丈夫ですよ。言う事聞かなかったら、どんなお仕置きをして下さっても良いですからv」
「は……はい、分かりました」
八戒の笑顔に押されて、はつい見張りを引き受けてしまった。
「良かった。悟空に頼もうかとも思ったんですけどね。
悟浄にだと丸め込まれそうだし、三蔵にも同じ手は通用しないでしょうし……」
「同じ手?」
「はは、去年、ちょっと……。それはともかく、お願いしますね、。
これくらいしないと、2人とも際限がないものですから。
……本当に、もう少し自分の身体を大事にしてくれたらいいんですけど……」
「八戒さん……」
その八戒の心配そうな様子に、は八戒が真剣なんだと感じた。
「……任せて下さい、八戒さん。引き受けた以上、絶対に今日1日煙草は吸わせません!」
「ありがとうございます。がそう言ってくれると、とても心強いですよ」
八戒はそう言って笑った。その事がは嬉しかった。
これまで、ずっと八戒には助けてもらっていた。
刺客との戦いの時も、三蔵となかなか馴染めなかった最初の頃も。
その八戒が自分に頼み事をしてくれている。それに応えたかった。
密かにやる気になっているに、八戒が尋ねた。
「それじゃあ、どっちを見張ってくれますか?」
「え?」
「三蔵と悟浄、がやりやすいと思う方でいいですよ」
そう言われて、は少しその場で考える。
三蔵と悟浄。
どちらもクセのある人である事には変わりがない。
しばらく考えた後、は口を開いた。
「……それじゃあ……」