三仏神によってカードの口座が閉められてしまった為、三蔵達は働く事となった。
短期とは言え、三蔵と悟浄はかーなーりイヤそうであるが、八戒に半ば(というか完全に)強引に押し切られ、しぶしぶながら承諾する、という形になったのだ。
ハッキリ言えば、断ると八戒の世にも恐ろしいオシオキが待っているのは明らかだからである。
面接の翌日、朝早く4人は従業員用裏口から店に入った。
制服に着替える為、更衣室へと案内される。
「これが制服になります。サイズはM・L・LLがありますので、ご自分に合う物を着て下さい。
着替えが済み次第、店の方に来て下さいね」
店主である怜杏は、そう言うと扉の向こうに消えていった。
「…………おい」
「どうしたんですか、三蔵」
「この服は……何だ」
「何だって言われても、制服ですよ?」
「こんなホストみてえな制服着たウエイターが何処の世界にいる!」
「ここにいるじゃないですか」
八戒はいつの間にか制服に着替えてしまっている。
「いいんでないの、別に? 俺、こういうの平気だし?」
悟浄もいそいそと着替えを始めている。
そればかりか、悟空までもが嬉しそうに着替えようとしている。
「三蔵、あなたもちゃんと着て下さいね? 制服なんですから」
背後に後光でも見えそうな微笑みをたたえて、八戒が佇んでいる。
こうなれば、着ない訳にはいかない……。
三蔵が嫌がるのも分からないでもない。
4人がこの制服を着て並んだ姿は、まさしく ホスト以外の何者にも見えない。
絵でお見せできないのが非常に残念な所である。
どうしても見たい方は、このレストランに客として訪れるしかないだろう。
それはともかく、着替えを済ませた三蔵達4人は、店の方へと出ていった。
店では怜杏がウエイトレス達を集めて待っていた。
「あらあら、やっぱり似合いますわねえ。正解でしたわv」
……何が正解なのかは、聞かない方がいいかもしれない。
ウエイトレス達も、ヒソヒソと互いに耳打ちしながら物珍しそうに4人を見ている。
まるで動物園に初めてパンダが来日したときのようである。
この例えが正しいかどうかは別として、こうもジロジロ見られるとさすがに不快になる。
……ひょっとしたら、当時のパンダもそう思っていたのかもしれない。
関係ない話はイスカンダルにでも置いておくとして、怜杏が4人を紹介する。
「今日から ホスト……もとい、ウエイターとして働いてもらう事になった人達です」
今の言い間違いは、わざとか、うっかり本心が出たのかどちらだろう……。
「僕は本心に1020点賭けますよ♪」
……相変わらず天と通じている八戒。一体何者なのだろうか……。
というよりも、その1020点という半端な数字は何処から出現したのか。
「? どうしましたか?」
八戒の独り言(?)が聞こえたのか、怜杏が不思議そうに尋ねる。
「いえ、何でもありませんよ。自己紹介するんですよね」
そうごまかして、八戒はウエイトレス達の方へ向き直り、自己紹介をする。
「初めまして。今日からこちらで働かせていただく事になった猪八戒と申します。
至らぬ点は多々あると思いますが、よろしくお願いします」
そして、他の3人にも目で自己紹介を促す。
「俺、悟空! よろしくなっ!」
「沙悟浄だ。美人揃いのウエイトレスで嬉しいね。ま、よろしく頼むぜ」
「……玄奘三蔵だ」
三蔵の場合、自己紹介と言うよりも名前を名乗っただけであるが。
4人それぞれの自己紹介が済んだ後、仕事についての説明を受ける事になった。
といっても、ウエイターなのだからそうそう特別な事はないのだが。
説明が終わると、もう店の開店時刻が近付いていた。
「じゃあ4人とも、よろしくお願いしますね」
かくして、4人の労働が始まった。
さて、あなたは誰の働く姿が見たいですか?
1.客商売出来るのか? 三蔵
2.つまみ食いしそう……。 悟空
3.絶対にナンパ始めるだろ。 悟浄
4.表向きの愛想は抜群! 八戒