ちっ、何で俺がこんな格好でこんな事をしなきゃならねえんだ!
くそ、八戒のヤツ……!
あいつらもよく平気なカオしてやってるな。
……客が来やがったか。
挨拶なんざ、八戒あたりがするだろ。
悟空のヤツ、何張り切ってやがんだ。
働くのがそんなに嬉しいのか?
そういや、寺院でも俺が与えた仕事とか嬉々としてやってたな。
『自分に何か出来る』って事が嬉しいんだろうがな。
まあ、アイツらがあれだけ張り切ってれば、俺のする事はねえだろ。
だんだん客が増えてきやがった。
しかも、何で女ばっかりなんだ。
……おいコラ、河童! 客を口説いてんじゃねえ!
他の事に使う脳みそはねえのか。猿以下だな。
何? 俺に注文とってこいだと?
ちっ、面倒くせえ……。
……分かったから、その笑顔はやめろ……。
「……ご注文はお決まりでしょうか」
うるせえ。注文はって聞いてんだよ。
何で女ってのは余計な事ペラペラと喋りたがるんだ。
俺が誰だろうが、てめえらには関係ねえだろう。
ふん、ようやく注文か。早くしろ。
……デザートばかりじゃねえか。
聞いてるだけで胸焼けしそうだな。
あ? 俺が持っていくのか?
またあの女共の相手しろってのか? 冗談じゃねえ。
……持っていけばいいんだろ……。
「…………お待たせ致しました」
だから、うるせえってんだよ!
付き合ってられるか。さっさと置いて行くのが得策だな。
ようやく落ち着いたか。
って、おい猿! 何て運び方してやがる!
……何でそれで落とさねえんだ……?
運動神経だけは抜きん出ていやがるからな。
何だ、悟空。……俺は楽しくねえよ。
今度は男の客か。
また俺が注文を取るのか?
ち、まあいい。さっきのうるせえ女共よりはマシだろう。
あ? 何だと……?
てめえ、俺に「幾らだ」とはいい度胸してるじゃねえか……。
汚ねえ手で触るんじゃねえよ、このクソ野郎。
いつもならこんなバカは鉛玉くれてやって終わりなんだが……。
……分かってるから、笑顔で睨むなんて器用な真似してんじゃねえ。
……人がおとなしくしてると思っていい気になりやがって、下衆野郎が。
いい加減手を離せってんだよ!
……ん?
なっ……! 何言ってやがる、このバカ猿!!
……別にそうは言ってねえだろ。早とちりするな。
時と場所を考えろって言ってんだよ。
……あぁ? まだいたのか、この下衆が。
うるせえ、殺すぞ。いい加減にしやがれ!
……プチ。 ガウンガウン!
ふん、当然の報いだな。
……うるせえな、銃声くらいでいちいち騒ぐんじゃねえよ。
……客? ふん、放っとけ。
またキレイさっぱりいなくなったな。
……おい、悟空? …………落ち込んでんのか。
……どうしろってんだよ……。
クビか。まあ、そうだろうな。
給料があんのか? あれだけの騒ぎ起こして。
随分お人好しな店主だな。バカ共につけ込まれても知らんぞ。
助かるのは助かるがな。旅費が足りないのは事実だ。
……世話になった。悪かったな、騒ぎ起こして。
ホントに人の好いヤツだな。何でアンタが謝るんだ。
……給料の件は助かった。……礼を言う。
うるせえぞ、カッパ。そんなに死にてえのか、てめえ。
旅費の方はとりあえず当面は何とかなりそうだな。
……さっきも思ったが、何でアイツは笑顔でプレッシャーかけてきやがるんだ……。
うるせえ、猿。何でもねえよ。
いいから、さっさと宿に帰るぞ! 早くしろ!
三蔵編 END