あ〜あ、何で俺がこんな事しなきゃなんねえハメになんだよ。
三蔵じゃねえけど、マジ面倒くさいよな……。
……わーってるって。ちゃんと働きゃいーんだろ、八戒?
こりゃ、美人が客として来るのを期待するしかねえな。
お、お客第一号か。……ち、野郎かよ。
俺が行くまでもねえな。
……と思ったら、子猿ちゃんが頑張ってるでないの。
全ては三蔵サマのためか? いじらしいねえ。
美女が来ねえ内は、俺の出る幕はねえな。
客が随分増えてきたじゃん。嬉しい事に女が大半じゃんかv
やっぱアレだな。先に来た客が『超格好良いウエイターがいる』って触れ回ってんだろ。
ようやく俺の出番だな。
「いらっしゃい。2人連れならそこのテーブルが空いてるぜ」
お、2人ともなかなかの美人。
水持ってくのも、俺だよな。
はいはい、分かってるよ。あくまで丁寧に。
「水をどうぞ。 ご注文はお決まりですか?」
うわ、自分で言ってて鳥肌たってきそうだぜ。
俺には、八戒みたいな喋りは無理だな。
ん? 俺? 彼女なんていないぜ?
おねーさん達みたいな美人が彼女だったら、幸せなんだろうけどな。
え? お世辞なんかじゃないぜ? よく言われねえ?
……だったら、仕事終わったらどっか行かねえ? この町、案内してよ。
……いってえ! 何しやがる、この鬼畜坊主!
だからって、いきなり背後からハリセンでぶっ叩く事ねえだろ!
大体、その制服の何処にハリセンが収納できるんだよ!?
うっせえ、バカ猿! 笑ってんじゃねえ!
ったく……、お、三蔵が注文取ってんじゃん。
折角イイ女の所に注文取りに行ってんのに、愛想のカケラもないねぇ。
アイツが愛想良くしてたら、却って気持ち悪ィけどよ。
おいおいおい! 何考えてんだよ、あのバカ猿!
落ちる、落ちるって……! ……落ちねえよ……。
あんな運び方出来るか、普通……?
……ん? 三蔵が男に迫られてやがる!
あの野郎、俺ですら三蔵の手なんかそうそう握れねえのに!
ちっ、ここは俺が一つ……って何ぃ!!
おい、猿! 何口走ってやがる!
三蔵の手を離させたのは良いが、何かムカツくぞ、そのセリフ!!
……懲りねえ親父だな。一発ぶん殴ってきて……あ。
撃つかよ、店ん中で。いい加減キレるだろうとは思ってたけどよ。
うわ、八戒に死ぬほど怒られるぜ、これ……。
かぁーいそーに……。こればっかりは俺もちょっと助けてやれねえもんな……。
あーあー、客が逃げてくよ。ま、当たり前か。
こんな騒ぎになったら当然クビだよな、やっぱり。
俺は別にいいんだけどよ、八戒がなぁ……。
え、給料もらえるの? マジで?
イイ女じゃん、オーナーさん♪
もう20年ほど若かったら、口説いてたかもしんねーよな。
おう、行くか。でも、ホントに給料もらっちまっていいのかよ。
でも良かったよな、心の広いオーナーさんで。
これで給料無かったら、三蔵様、八戒に殺されちゃってるぜ?
っておい! 三蔵が礼言ってるよ! うわ、珍しいモン見た……。
……分かってるって。
怜杏さんよ、迷惑かけたな。ありがとよ。
これで旅費も何とかいけそうだしな。
……三蔵、頑張れよ。健闘を密かに祈ってるぜ……。
悟浄編 END